塚田トオル's Blog

還暦間近のおっさんが綴る雑記録

『慟哭』貫井徳郎

新興宗教にのめり込み、少女を生け贄として死者復活の黒魔術を行う男と、その連続幼女殺害事件を捜査する警視庁特捜本部の緊迫した状況が、チャプターごとに交互に描かれつつ小説は進んでいく。

ラストの3~40ページのどんでん返しは、こんなベタなどんでん返しを書く作家がいるんだ、とある意味ビックリさせられた。

ある新興宗教を狂信した男は、亡くした娘の復活を願い、黒魔術に没頭する。さらってきた少女を生け贄にして殺しても、当然ながら、少女が死んだ娘として蘇るはずはなく、次こそは次こそはという思いで、少女を攫ってきて殺害することを繰り返す。

一方、特捜本部のキャリア、佐伯はこの連続少女殺害事件の陣頭指揮をとっており、それらの場面が交互に描かれるのだ。

実は、佐伯は以前の少女誘拐殺人事件で自分の娘を犯人に殺され、その後悔と苦悩から警察を辞めざるを得なくなった。そして一年後、その悲しみの重圧から佐伯自身が黒魔術で娘を生き返らせようと犯行を繰り返すようになったのは佐伯自身だったのである

最初の少女連続殺害事件と佐伯が起こすことになった犯行という二つの事件が、後の事件において佐伯が犯人とはわからないよう、巧妙に書かれているので、読者は「もしや」という思いは抱きつつ、ラストで事実を突きつけられて呆然とする。

というのがこの小説の面白いところである。